*片頭痛、てんかん、メニエール病、過換気症候群、失神、起立性低血圧、低血糖等を第一に疑うべき明確な証拠がある例は除く


上記を2つとも満たす場合は 

ACVSとして STEP 2へ。

一方だけを満たす場合はACVSのトリアージの対象としません。必要に応じて専門施設へのコンサルト、精査などを行ってください。

解説)
ACVSの問診:「それは何をしている時に起こりましたか?」

 脳血管障害は、脳の血管が破れたり、詰まったりする病気ですから、発症はある一瞬を境に症状が出現する「突発発症(Sudden onset)」が特徴です。これに似た用語に「急性発症(acute onset)」がありますが、こちらは「ある一瞬を境に」とは異なり、一般に数分から数十分の間に症状がピークに達する場合をいいます。急性発症も突発発症も患者にとっては突然起こったことですから、「症状は突然起こりましたか?」と問診すると患者はどちらであっても「はい」と答えることになります。従って、ACVSの問診では、「何をしている時に起こりましたか?」と聞くことが重要です。この時「○○をしていた時に」「あれはTVのニュースを見ている時ですから、○時ごろでした」等、発症時刻までもおおむね陳述できる場合は、脳血管障害の可能性が極めて高くなります。

ACVSの症状は神経機能障害

 脳血管障害は、脳の血管が破れたり、詰まったりして起こる病気ですから、脳の一部の機能が侵されるのが特徴です。幻覚が見える、全身けいれんを起こすなども神経症状ですがこれら陽性徴候は、一般に脳血管障害では起こりません(二次的に early seizureとして起こることはあります)。一般に症状は神経機能の障害(神経脱落症状)が基本です。一過性の腕の振るえで発症するTIA(limb shaking TIA)もありますが、極めてまれです。
 起こった症状を明確に陳述できない高齢者(poor historian)や明確な症状を呈さない発作(vague symptom)もありますので、ACVSではないと否定するよりもACVSかもしれないと広くトリアージすることが重要です。
 神経脱落症状ではなく、経験したことの無い激しい頭痛を主訴とする患者では、くも膜下出血を疑って専門医との連携を図ります。頭痛患者の初療においてくも膜下出血の見逃しを防ぐことは特に重要で、神経脱落症状を認めない頭痛患者の初療でくも膜下出血を感度100%で除外できたとされるオタワSAHルール等の利用が有用とされています。